19時に、鶯谷で。

SMクラブを利用するのは久しぶりだった。以前、お気に入りのM女がいた時は月に何度か通っていたが、彼女が引退してからは足が遠のいていた。特に予定もない休日の昼下がり。なんとなく、給料日後で懐にも時間にも余裕があったのでSMクラブのホームページを覗いて電話をかけた。元気の良い女性のスタッフが電話に出る。小心者で奥手の自分はスタッフが女性だと若干の緊張を感じてしまうのだが、それが気づかれないようにと平静を装って今日の夜の時間でいける女の子がいないか聞く。

何名か候補をあげてもらったが、正直、誰でも良い気分だったので何となくホームページのトップページでオススメされていたM女を指名した。

予約は19時。まだ時間に余裕があるので、気分を高めるためにレンタル屋で借りていたAVを付けた。とはいえ久しぶりの休日。AVから流れる声をBGMにしながら溜まっていた洗濯やら部屋の掃除をしていると時間はあっという間に過ぎてしまった。
17時30分。身支度を整えて家を出る。まだ少し時間に余裕があるが、プレイの前に軽く腹ごしらえもしたかった。最寄り駅までの道すがら、丼チェーン店のネギ塩豚丼の文字が気になったが、ネギ臭い息でプレイをする気にもなれず、そのまま通り過ぎて電車に乗る。たしか鶯谷の駅前にはカフェがあったはずだ。そこでサンドイッチとコーヒーでも頼んで時間をつぶそう。

鶯谷という駅はひどく地味なわりに独特な存在感がある。密集するラブホテルがその雰囲気を構築しているのだろう。ここに降り立つといつも湿度が上がる気がする。
汗の匂い

洗剤の匂い

緑の匂い

消毒液の匂い

女の人の匂い…
様々な匂いと人々のじっとりとした感情の湿気が自分を包む。ああ、鶯谷に来たなと実感する。この感覚が例えば吉原や渋谷、新宿といった他の土地では感じないのだから不思議だ。

駅の改札を出てカフェに向かう。

久しぶりのSMだ。しかも、初めてのパートナー。緊張する。少し、怖くもある。いや、少しではなく、だいぶ怖い。相手は俺に打ち解けるか。それに対し、俺の内側がどの程度顔を出すのか…。

予約の19時まで、まだ余裕がある。
まぁ、結局のところ、相手に会わないとわからないのだ。初めての相手ならではの緊張感を味わいながらのんびりとコーヒーでも飲もう。

俺は自分の胸の高鳴りを感じながら、カフェの扉を開いた…。

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