理性と色欲の間で

写メ日記で2016年6月26日に公開したものです。


 

赤い月、青い月、

2つの月が空を照らす世界で。

 

今日は2つの月が重なる日。

太陽は姿を見せず、昼間も妖しい月の光が世界を満たしていた。

 

この日は男女が目を合わせる事が禁じられている。たとえ親子であっても、恋人であっても。次の夜明けが来るまでは、挨拶をする時や食事、仕事の時はもちろん、男女の交わりの時も、目を合わせる事ができない。それは、この世界の者なら誰でも知っていることだった。

 

それなのに

 

 

彼からの手紙が届いたのは昼下がりのことだった。普段は普通の郵便なのに、今回は特急伝書鳩。私は何か悪いことでもあったのかと少し不安になりながら、鳩に付けられた手紙を開いた。

 

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親愛なる君へ

 

赤い月

青い月

2つの月が交わる今夜

月に嫉妬した男を君は笑うだろうか

 

冷たい身体を救うのは

君の抱擁

 

渇いた心を癒すのは

君の声

 

喜びの涙を忘れた瞳を見つめるのは

君の眼差し

 

会いたいという想いを伝えるのに、これだけ回りくどい言葉を使ってしまった。

 

僕は、今夜、君に会いたい。

 

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夕方、私は目を合わせないように少し俯きながら、彼のアトリエの扉を開けた。

 

私を招き入れた彼がアトリエの奧の部屋までエスコートをする。

 

部屋に到着するや否や、彼が私をベッドに押し倒した。

目が合いそうになって、私はぎゅっと目を閉じた。彼の顔が自分のすぐ近くにあるのを感じる。

 

「目を合わせてはくれないの?」

 

「だって今日は、2つの月が重なる日

 

「じゃあ、君はなぜ、この日に男女が目を合わせてはいけないか、本当の理由を知ってる?」

 

「この日に目を合わせてしまった男女は、お互いに不幸になってしまうからでしょう?」

 

私は目を閉じる力を更に強くした。

 

「それは、違うよ。本当は、この日に目を合わせた男女は生涯強い絆で結ばれてしまうから。自分の一生を赤の他人みたいな適当な人に捧げたくはないだろう?」

 

そんな話、聞いたことも無かった。なぜ彼はそんなことを知っているのだろう

 

頭の中で疑問符がどんどん生まれていく。

 

彼はゆっくりと愛撫をはじめた。

 

少し、くすぐったいような、チリチリとした刺激を感じるような、もどかしい感覚

 

「目を合わせてくれたら、僕の全てをあげる。この意味、君なら、わかるよね?」

 

 

理性と色欲の間で

私は目を

 

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