妄想話処女作

写メ日記で2016年3月22日に公開したものです。


 

「次に会う時は自縛をしてきなさい。」

そう言って別れてから一ヶ月が経った。

本当はもう少し早くに会いたいと思っていたのだが、

お互いの都合が合わず、今日に至った。

目の前に現れた彼女の服を脱がせると、縄をかけられた身体が現れる。

亀甲縛りだ。

「私、自分で縛るなんて、やり方が分からないです…。」

と、一ヶ月前の彼女は言った。しかしどうして今、目の前の女は縄を身に纏っているのか。

自分で調べたのか、誰かに教えられたか、

そもそも、あの言葉は嘘だったのか…。

どの経緯だったとしても、結果として彼女は私の指示に従った。

それは喜ぶべき事だ。

だが、

憎らしい―

この女は私の心を強く揺さぶる。

彼女を鏡の前に立たせる。

「しっかり、自分の身体を見るんだ。」

私は数歩離れた所で彼女を見る。

彼女の顔つきが変わった。

色香を放つ果実のような甘い表情。

瞳は虚ろに鏡を見つめながらも、奥に宿る光には意思が感じられた。

歪な亀甲縛りは、左右非対称な身体を強調させているようだった。

行き場のない両手を腹の前で軽く組み、

静かに呼吸をしている。

彼女は自身が映る鏡を見つめる。

私はその彼女を見つめる。

そこに言葉は無い。

どれくらいの時間が経っただろうか。

お互いの集中力はまだ続いている。

私達を繋げている特別な時間。

実際には交わっていない視線が、彼女の身体を媒介にして絡み合う。

限りなく静かでありながらも濃厚な時の流れが、

私の心を満たしていった―。

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